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潜水服は蝶の夢を見る

「潜水服は蝶の夢を見る」は閉じこめ症候群(Locked-In syndrome)となってしまった、男の物語です。大学の授業でこの小説の存在を知りました。

閉じこめ症候群(Locked-In syndrome)とは、意識がはっきりしているのに、体が動かなくなってしまう病気です。この本の著者、ジャン=ドミニック・ボービー氏(以下ジャン)の場合、脳溢血となってしまったことがきっかけで、この病気になってしまいました。

著者であるジャンは世界最大手のファッション誌『ELLE誌』の編集長を務めていた人物です。フランス人で2人の子供を持つ父親でもあり、幸せな家庭を築いていました。

エリート中のエリートであった、ジャンを襲った悲運。それは脳溢血により突如、ロックドインシンドロームとなってしまったことです。彼は意識ははっきりとしているものの、左目のまぶた以外の全運動能力を失ってしまいました。病院のベッドで目覚めた時には、人工呼吸器をつけ、かろうじて生きているという状態です。

仕事にプライベートに何不自由ない幸福な毎日を送っていたのが一点、動き回ることも、喋ることもできなくなってしまった彼の心情は、本当に想像を絶するものだったと思います。 そして何より、彼の場合はこの生き地獄のような状態の中、自分で命を絶つことすらもできない状態なのです。絶え間なく続く苦しい状況下でも、そこから抜け出すことが叶わないのです。

彼に残されたコミュニケーション手段は唯一動くまぶたを使った「瞬き」だけ。一時はまぶたを使って家族の前で「死にたい」と漏らしてしまうほど、心が折れてしまっていました。 もちろん、いくら死にたいと思っても、彼には死ぬことすらできなかったのですが。

しかし、そこからが彼が並みの男ではなかったという所以が現れます。 周囲の励ましがあり、自分の体験を本として伝えて行くことを決意するのです。

瞳だけで文章を書くのがどれだけ大変かというと、1単語を入力するのに約2分の時間を要します。本一冊書くのに要した瞬きの数は約20万!!それでも彼は信念を持って、やり遂げました。

そうしてできた一冊が『潜水服は蝶の夢を見る』です。

潜水服とは閉じ込められたジャン・ドー自身の身体的な不自由さの象徴。蝶はそんな状態の中でも自由にはばたける心を意味しているそうです。

 

ジャン=ドミニック ボービー 講談社 1998-03-05